2023年11月12日

2023年11月上旬
『焼き芋とドーナッツ』(KADOKAWA)湯澤規子著
時事通信社より書評配信。

カーリング女子日本代表の選手の「もぐもぐタイム」がアスリートの絆を見せてくれたように、女性たちを結びつける焼き芋、ドーナツなど「おやつ」に象徴される日常茶飯に歴史地理学者の著者は着目します。歴史学が見過ごしてきた生活空間で「わたし」を模索した女性たちの人生、奇跡の連鎖を追う人間交流史です。
『焼き芋とドーナッツー日米シスターフッド交流秘史』(KADOKAWA)湯澤規子著
11月〜全国地方紙の書評欄をご覧ください。

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津田塾大学創立者の津田梅子は6歳から米国に11年間留学して帰国した際、女性の社会的地位があまりにも低い日本の現実に戸惑を覚えます。留学仲間で日本人女性初の学士号を得た山川捨松の寄宿先の娘で英語教師として来日したアリス・ベーコンの共感を得た梅子は1889(明治22)年、24歳で再び渡米してウッズホール海洋生物学研究所に学ぶことになります。「良妻賢母」の価値観に縛られた祖国とは異なり、そこには科学分野に挑む多くの同性の仲間がいた―。
本書が世紀を超えてよみがえらせた女性たちの勇姿は、今なおジェンダーギャップを抱える私たちの日常を激しく揺さぶります。
posted by noriko-motooka at 19:45| コラム